第60回近畿理学療法学術大会開催に際し
『いのち輝く未来社会の理学療法デザイン 〜近畿からのイノベーション〜』
大会長 中川 法一
増原クリニック、
株式会社フルーション
人生100年時代と言われる中で、理学療法士はどう活躍しどう生きていくのかを真剣に考えなければ、時代に取り残されてしまうのは確実ではないでしょうか。厚労省の人生100年時代構想会議の中間報告によると、100年という長い期間をより充実したものにするためには生涯にわたる学習が重要であり、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題であると書かれています。
また2015年9月の国連でのサミットの中で世界のリーダーによって決められたSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)は、国際社会共通の目標であり、「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成され、普遍的な目標として「誰も置き去りにしない」という約束を掲げており、人生100年時代構想の概念と通じるところが大いにあります。そこで60回を迎える大阪での近畿理学療法学術大会では、上記の提言を踏まえ、理学療法学を拠り所として理学療法士が人生100年時代に八面六臂の活躍ができるように、当面の10年後へ向けた持続可能な目標設定の提言を行うことを目的として学会企画を考えています。
わが国における理学療法士誕生からの歴史は、経験則依存型の理学療法から、科学的根拠に基づく理学療法(Evidence-based Physical Therapy,EBPT)へ概念的枠組み転換であったと言えます。表舞台で歴史を刻んできたのは紛れもなく臨床家と称される理学療法実践者であり、彼らは経験値による実証報告としての解釈や舞台裏で懸命に支えてくれた理学療法学研究者により集積されたエビデンスに基づき、最良な理学療法の提供を心がけてきました。それこそが国民への使命だと考えていたからです。
しかし近年における理学療法は根拠なき安直テクニックへの志向偏重に陥っているのではとの揶揄があります。「明日から使える」を売りにした研修事業者が闊歩し科学的根拠の希薄な理学療法風技術が蔓延している様は、基礎体力のない空け者が闇雲に大太刀を振り回しているようにしか見えません。あまたある健康食品の常套句である「これは個人の感想です」が、理学療法士の世界にまで、まかり通っているのではと激しく警鐘を打ち鳴らしたいのです。
第60回記念学会では、各領域の第一線で活躍する方々を講師としてお招きし、私たちが駆使する理学療法技術の科学的根拠を明らかにして戴きながら、10年先の在るべき姿とその道程を提示していただく予定です。またシンポジウムでは、近畿圏の有望な若手に参集していただき、臨床研究のあり方と未来について議論を交わして戴きたいと考えています。人生100年時代が、いのち輝く未来社会であるためには、理学療法をどのようにデザインし国民の健康づくりに寄与できるのかを、しっかりした目標設定の上で持続的に考え行動する必要があります。僅か一翼ではありますが、本学会を通して2030年へ向けた理学療法デザインの提言を行っていくつもりです。
理が非でも第60回近畿学会は開催します
第60回大会 大会長 中川法一
Covid-19感染の猛威により、第59回近畿理学療法学術大会(京都)は参加者の安全・安心確保のために断腸の思いで中止という判断をされました。周囲を見渡すと各種学会が中止や開催延期となっており、近畿ブロック会員の皆さまも不安に思われているでしょうが、第59回大会の無念を晴らす使命も込めて第60回近畿理学療法学術大会は「2021年2月7日に開催する」と断言をいたします。
現時点(2020年6月)で開催日の社会情勢は全く想像もつきませんが、事態が終息もしくは収束に向かい大阪国際会議場で一堂に会する学会を開催できることが最良ではありますが、第2・3波による会場使用が認められない状況であればオンライン開催も視野に入れて準備を進めております。また会場の使用制限は掛かるが会場開催が可能である場合は、現地開催とオンライン参加を並行して行うハイブリッド型での開催も考えており、いかなる状況であっても開催できるよう準備を進めております。演題登録について心配をされている会員もおられるかと思いますが安心をしていただき、日頃の研究成果を演題として奮って登録をお願いいたします。
Covid-19の脅威の中で、会員諸氏の現場は大変な状況が続いていると拝察いたしますが、近畿ブロック会員の「学びを止めない」「未来への学びを創造する」そして「理学療法は近畿から」という強い意志をもって準備を進めておりますので、ご理解ならびにご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
2020年6月8日